只見線をめぐる旅
10月の連休を利用してSLやトロッコ列車の運行で知られる只見線沿線をめぐってきた。
昔から行ってみたいと思いつつ行けずにいたエリア。初日は新幹線と磐越西線で会津若松に夜到着、翌日から2泊3日で「会津本郷」、「会津宮下」、「会津柳津」、「只見」とまわった。
食堂を出ると雨風が強まっていた。たまたま通りかかった親切な地元の人に本郷駅に送ってもらった。
駅はこの通り無人駅でガランとしているが、雨風をしのげる待合室とトイレ、街灯がある。会津本郷発13:22小出行きに乗車。これに乗り遅れると夕方まで電車はない。
三島大橋から今宵の宿「栄光館」までは6、7分。只見川に注ぐ大谷川の岸辺に建つ。SL撮影のエキスパートである高校の写真部仲間から教えられた。
天然掛け流しの温泉が気持ちいいのと「メシが美味い」という言葉どおり。宿に泊まるために宮下に来たようなものだが、こちら方面に来る機会があれば、また利用したい。
写真は翌朝部屋からの景色。
会津宮下から上り9:14に乗車、会津柳津に9:38着。昨日会津本郷から来た道を戻る格好。本数が少ないのと宮下に泊まるためにこういう変則行程になった。
会津柳津駅前には「C11 244」が展示されている。信仰と温泉の町だけにまさかと思ったが、この駅も無人化されていた。
道沿いに土産物や会津桐の下駄を売る店が並ぶ。どの回だったか、「男はつらいよ」のオープニングで虚空蔵尊での商売のシーンとともに登場したことがある。桐下駄を買おうとしたものの値段が折り合わず…。会津桐は寅次郎と縁がある。
「魚渕」は、「ウグイ」の集団棲息地。弘法大師が虚空蔵菩薩の本尊を刻んだ木片を投じたところ無数のウグイとなって現れた、との伝説。
遊歩道があり、入口でウグイのエサを販売している(100円)。試しに餌をやってみるとウグイならぬ鴨の群れが集まってきてエサの取り合いで大変な騒ぎ。
しかしよく見ると食べきれなかった餌が沈んでいくところを、ちゃんとウグイが食べていた。
会津柳津駅に戻り、下り14:14発小出行きで只見に向かった。この電車は昨日会津本郷から乗ったものと同じ。よって乗り遅れは厳禁。
途中「会津川口」で5分ほど停車。ここは只見川のすぐ近くに駅があることで知られている。
旅後記
只見線、本数が少ないだけに乗客も少ないのかと思ったら結構乗っている。通学の学生、観光客も多い。ただ、私の見たところ観光客はずーっと乗りっぱなし。本数が無く「途中下車の旅」が事実上出来ないのだから仕方がない。
只見線を利用する観光客にとって一番の観光目的は「只見線」そのもの。只見線の車両に乗り、車窓の景色を楽しみ、何分か止まれば下りて電車を撮り、駅を撮り、周辺の景色を撮る。ここでは「只見線」が主役だ。
一方、沿線の町である本郷や柳津を歩いていると、只見線の存在感はひどく薄い。温泉地であり虚空蔵尊参りの人が集まる柳津には観光客が多くいたけれど、この時期は99.9%クルマ利用ではないだろうか。事実、柳津駅で一緒に降りた人は0人、乗ったときもわずか1人。行く先々で「電車で来た」「電車で次の目的地に行く」と知ると驚かれた。
1年のうちほんの数日を除いて町の観光と只見線は密接に絡むことはないのかもしれない。只見線の旅が只見線のレールの内側にとどまり、沿線の旅が只見線に寄らないという皮肉。旅のあいだ、あれこれと想いは広がるが、わずかでもダイヤが維持されていることをまずは感謝しなければならないのだろう。
撮影機材:ソニー α700、タムロンAF18-250mm F3.5-6.3 DiII
