野々島へ(浦戸諸島)

今回の塩竃・松島湾の旅でもっとも楽しみにしていたのが「浦戸諸島」。
島の存在を知ったのはNHKのドキュメンタリー番組だったが、旅のガイドブックなどで調べてもあまり詳しく紹介されていない。
前の晩、塩竃の寿司屋で「渡し船で島めぐりすると楽しい」と聞いた。時間的な余裕があればそこまでしたいところだったが、今回はマリンゲート塩釜から定期船で野々島に渡り、島内をのんびり散策した。

市営汽船で浦戸諸島に向かう。船は塩竃を出ると、桂島-野々島-石浜(桂島)-寒風沢(さぶさわ)-朴島(ほおじま)と島を巡る。

ひとつめの「桂島」で乗客の多くが降りた。釣り客や用事で市内に出掛けた帰りの人らしい。荷物の引き取りに桟橋に人がきていた。

塩竃を出て約30分で野々島に到着。ここで下りた人はほかにおらず、船はわずかな乗客を乗せて石浜に向かった。
港近くには松島湾らしい岩礁があり、さらに野々島独特の洞穴がいくつも見える。見慣れない風景を目にしたからだろうか、島を下りたときから何となく不思議な感覚にとらわれた。

桟橋の前には「浦戸諸島開発総合センター」があり、セミナー、合宿、体験教室など様々な催しに利用されている。
センターの左にある小さな建物は公衆トイレ。島内は想像していた以上に観光客向けの施設がなく、公衆トイレもほとんどないので散策前に行っておく。

港から右へ、海水浴場方面へ歩く。まもなく左手に熊野神社の鳥居が現れた。神社へはあとで向かうことにしてまずは浜へ。

桟橋から6、7分ほどで綺麗な砂浜に出た。
両側を岬に囲まれた野々島海水浴場は穏やかに輝いていた。右手の千代崎と蔭田島の景観が非常に印象的だった。もう少し時間があれば蔭田島の近くまで足をのばしたかった




浜から島の奥へと向かった。
山道に突然鮮やかな色が現れてドキリとさせられた。夜泣き地蔵と六地蔵。

山道は島の中央部を通っていて、ときどき海の景色が開ける。歩きはじめてから、初めて人の姿を見た。

浜に下りられる場所があるとつい下りて寄り道したくなる。宇内浜だと思うが詳細な地図がないのでよくわからない。ただ景色を楽しむのみ。

道の終点は浦戸中学。その手前に渡船乗り場に下りる道がある。対岸は寒風沢島。渡船は料金無料。次回来ることがあれば桂島・野々島・寒風沢島と渡ってみたい。

道を戻る途中、島の北側、漆島・馬ノ背島方面の景色だったと思う(が自信はない)。島を縦断するメインの道からはなかなか島の北側を伺うことが出来ない。

途中で山道に入った。屋根越しに見えるのは桟橋方面だったと思う。


岩石を削って開かれた道と思われる。左に下りる道のほか右に藪の中をくぐる細い道が続いている。島にはこのような秘密めいた道が多い。

熊野神社。藪をくぐり細道を歩いた先にあった。木々の緑と石と土の色ばかり見てきたからか、朱い鳥居と屋根がやけに映えていた。

島に無数にある洞穴。かつて密貿易で築いた富を蓄えるために掘られたとも伝えられているが、現在は物置に使われている。

石の肌がうかがえる島の細道。

塩竃に戻る船の時間もあって、熊野神社からはまっすぐ桟橋に下りた。この日歩いた島の道は多少把握できたものの、目には見えているのに行き方が分からない、という集落があった。風光は明媚だし、他の島とともにまた訪れたい。

船を待つあいだ、観光客を満載した大型の遊覧船が、野々島の前を通り抜けていった。

旅後記
各所に残る洞穴、細く分かりづらい小径。秘密めいた謎の島だった。いつか泊まりがけで再訪したいと思う。その時は島内に宿がないので泊まりは桂島か寒風沢島になるだろう。

撮影時期:11月下旬
撮影機材:ソニー α700、Vario-Sonnar DT16-80mm F3.5-4.5 ZA